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​生ピアノと電子ピアノの違いと、メリット・デメリットについて

​近年、各メーカーの素晴らしい技術進化と、高性能かつ安価なモデルもあり急速に普及の進んでいる電子ピアノ。​
ここでは電子ピアノにスポットをあてて、生ピアノとの違いや、メリット・デメリットについて
ピアノ販売店、および、ピアノを弾く側の視点で解説していきます。
​電子ピアノのメリットについて
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メリット①
音量を抑えたりヘッドフォンで演奏可能

 

電子ピアノは全機種において、ボリューム調整やヘッドフォンを使用しての演奏ができるため。音量を抑えないといけない住宅環境のもとでは非常に重宝する楽器と言えます。これは電子ピアノの最大のメリットとなります。

​電子ピアノのメリットについて
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メリット②
​省スペースで設置でき、移動も比較的簡単に行える

電子ピアノはアップライトピアノに比べて横幅・高さ・奥行きが1周り小さいため、省スペースで設置できます。本格的な高額機種になるほどアップライトピアノに迫るサイズにはなりますが、幾分はコンパクトといえます。

また重量も軽いもので30キロ台、重いもので80キロ台なので、設置後に基本的に移動のできないアップライトピアノと違い、部屋内の移動も可能です。

​電子ピアノのメリットについて
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メリット③​
本格的で高音質な音色を気軽に楽しめる

電子ピアノを製造する各メーカーは、それぞれ世界の最高レベルのコンサート用グランドピアノの音色を忠実に収録、再現に力を入れるため、気軽に世界の名機の音色を奏でることができます。これらは製造が新しくなる度に進化しております。機種によっては、弦の共鳴や、演奏時にペダル・アクション等から発生するノイズまでリアルに再現しています。

​電子ピアノのメリットについて
生ピアノと比べての​、電子ピアノのデメリットについて
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デメリット①
タッチ(弾き心地)の生ピアノとの明確
な差
像はアップライトピアノのアクション​模型

生ピアノには、タッチ(弾き心地)を決定づけている複雑な内部構造である「アクション」がありますが、電子ピアノにはハイブリッドモデルを除き、アクションはありません。

​各メーカー、タッチ(弾き心地)に関しても研究を続けており、初期のモデルに比べると鍵盤の質感や押し込んだ際の重み、タッチ感は劇的に向上した結果、電子ピアノ同士で比較した際には、タッチ感の違いや質感の違いは確実に感じられますが、構造が違うゆえに、どうしても生ピアノと同じ弾き心地とは言えないのが事実です。

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デメリット②
​デジタルとアナログの違いが生み出す表現力の差
(画像は電子ピアノの内部基盤のイメージ)

技術の進化によって、ピアノのさまざまな要素を再現できる電子ピアノですが、ピアノ演奏に必要な要素を、主に鍵盤を押し込む速さ(=力)や、ペダルの踏み込む深さ等をセンサーが拾い、デジタル処理することで再現する都合で、どうしてもそれらが数値によって処理される「段階的なもの」になることと、センサーでは読み取れない生ピアノの微妙な表現は再現ができないことがデメリットに挙げられます。

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デメリット③
音がアンプを通してスピーカーから鳴ることによる、生ピアノとの響きの差
(画像はアップライトピアノの内部構造)

生ピアノは、鍵盤を押し、それによってハンマーが弦を叩き、それがピアノ本体内で増幅されることで、大きく美しい音が響きますが、電子ピアノは本体のアンプを通してスピーカー、もしくはヘッドフォンから音が鳴ります。これは電子楽器のため仕方のないことですが、たとえボリュームを生ピアノと同等の大きさまで上げても生ピアノとは異なった響きとなります。

アップライトピアノ(生ピアノ)は複雑に構成された「アクション」のはたらきにより、ハンマーが弦と衝突することで、ピアノらしいタッチになります。

電子ピアノはより簡易的な構造で、鍵盤を押し、鉄の棒がスポンジ状のパーツと衝突することで、疑似的にピアノのタッチを再現しています。※こちらはヤマハ製電子ピアノの内部構造です。

​これら3点が生ピアノとの演奏上での違いに繋がります。
近年の電子ピアノの劇的な進化によりその違いは昔のモデルよりも無くなってきてはいますが、
弾き手のピアノの演奏技術が上がるにつれて、楽譜通りの演奏をする分には電子ピアノでも支障はないものの、ピアノ教室や発表会で使用する生ピアノとの演奏上での違いや違和感、物足りなさを感じる機会は増えていくことになります。
具体的にその時期とは、あくまで個人差はありますが初級から中級レベルに移行するあたり(バイエル終了後、ブルグミュラー「25の練習曲」に移行後)が多い印象です。それに伴いピアノ講師による細やかな演奏指導も難しくなり、結果、演奏技術、特に表現力が頭打ちになりやすいと言えます。

​アップライトピアノ(生ピアノ)と
電子ピアノの実際の音の違い

ここではアップライトピアノ(生ピアノ)と電子ピアノの、実際の音の響きの違いを聴いてみましょう。
検証方法として、アップライトピアノの生音と同じ音量にまで電子ピアノのボリュームを上げ、できるだけ同じ演奏をしています。
両方ともマイクで収音し、その後、音には全く加工や編集は行っていない、ありのまま収音された音になります。

​ヘッドフォンやイヤホンで試聴されると、より響きの違いを感じられます。

​こちらはヤマハのアップライトピアノ(生ピアノ)になります。
​アコースティックな響きが部屋全体に広がっていることがわかります。

​こちらはヤマハの上級電子ピアノ「クラビノーバ」になります。
​スピーカーからの音なので、同じ音量でも響き方に違いがあります。

番外編 その1

意外と知られていないこと

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​① 意外と値段が変わらない 意外とサイズが変わらない

電子ピアノを新品購入する場合、安いもので10万円以下、しっかりとしたモデルだと20~40万円ほどしますが、例えば当店の中古アップライトピアノの平均価格は20万円台後半~30万円台前半。お安いものだと10万円台のものもあります。各メーカーの中・上級クラスの電子ピアノのご購入のご予算があれば、綺麗にリニューアルされた、長く使用できる本物のアップライトピアノもお選びいただけます。

また、電子ピアノもアップライトピアノも鍵盤の数は88と同じですので、横幅は意外とそこまで変わらなく、アップライトピアノで150cm程度、電子ピアノだと130cm~140cmであることがほとんどです

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② 消音機能付きのピアノがある
​ついていないピアノに後付けも可能

ペダルやレバー1つで、コトコトという打鍵音以外のアコースティックピアノの音をゼロにし、ヘッドフォンで演奏を楽しめる、消音機能付のピアノがあります。メーカー純正のものから、通常のピアノに後付けされたものなど様々。音は出せないけれど、生ピアノのタッチがどうしても必要な方には最高のピアノとなります。当店では店内展示ピアノには、税込み138000円、既にお持ちのピアノには税込み148000円(遠方の場合は出張費別途)で現行型の後付け消音装置を取り付けいたします。

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③ 中古の電子ピアノならとても安い
年式によっては性能は現行モデルとそれほど変わらない

​前述のとおり、モデルによっては高額な電子ピアノですが、中古だととてもリーズナブル。メーカーにもよりますが、発売から10年以内のモデルだと、現行モデルと比べてもタッチも含めた性能においてほぼ遜色ないものが多く、現行モデルは演奏以外の付加的な機能が進化していることが多いです。(Bluetooth機能など)それでいて、価格は新品価格の半額以下なものがほとんど。お試しでピアノを始めるために当店で中古電子ピアノを選ばれる方はとても多いです。

番外編 その2

​電子ピアノから生ピアノへの買い替えのタイミングやきっかけは?

当店にご来店のお客様(お子さん)の場合、早い方でピアノを習い始めて半年~1年以内。
平均的にはピアノを習い始めて2~3年程で電子ピアノからアップライトピアノ・もしくはグランドピアノに買い替える方が多いです。年齢にすると小学校の中学年くらいのお子さんが多い印象です。

買い替えのきっかけとしては、「お子さん本人が電子ピアノのタッチに違和感を覚えた」「お子さんの上達に伴い、ピアノ講師に買い替えを勧められた」「コンクールに出場するにあたって」といったものがほとんどです。​

まとめ
​結局、生ピアノと電子ピアノ、どちらを選ぶべきか

​以上のことから「ピアノ演奏すること」に限定すると、電子ピアノは生ピアノに一歩及びませんが、逆にそれ以外で電子ピアノが圧倒的に優れていることがあります。それは、音量を絞れる等、機能面ももちろんですが、「誰でも気軽にピアノを始めやすい」ということに尽きます。生ピアノがどうしても部屋に入れられない、または集合住宅により音を出せない、その他様々な理由で生ピアノを選べない方にとって、電子ピアノは最高の選択肢と言えます。

よって住環境の事情がある方は電子ピアノを選ぶのがベストであり、(消音機能付の生ピアノならさらに良い)「これから始たいけれど、とりあえずお試しで・・​・」という方にも電子ピアノは最適なパートナーになります。さらに、新品製品にこだわりがない方は、中古の電子ピアノをお選びいただくのが最もリーズナブルかつコストパフォーマンスに優れると言えます。

また、電子ピアノからのステップアップを考えている方や、初めてのピアノでも最初から本格的かつ効率的に練習をはじめたい方は、設置環境に問題がなければ、生ピアノを選ぶことで日々の練習による上達度や、ピアノを弾く喜びは飛躍的に向上します。

メーカーやインターネット上で発信される電子ピアノに関するポジティブな情報を過信しすぎず、
電子ピアノと生ピアノは構造の違いにより、楽器としては完全に同じではないことを理解したうえで、実際に弾き比べたうえで、ライフスタイルに合わせて楽器を選択することが最も重要と言えます。
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